唐橋史『出雲残照』とかをよんでみたり

雨の振らない梅雨を目の前にして「いつもならこの時期…」といいながらも昨年の今頃についてはあまり記憶の無い昨今。

知らず知らずに、今年はーー。とか去年はーー。などと言っていると何ともおもむき深い。

さて今回読んだのは『出雲残照』
古文女と名乗る謎のお姉さん唐橋史氏の歴史小説
文学フリマから2ヶ月も過ぎた今。やっとこさ本を開く

内容紹介
戦乱の大陸を捨てて海に漕ぎ出した張旦は、東海の倭国に辿り着く。その地を治めていたのは聡明な王「イズモタケル」だった。彼の元で平穏な日々を送る張旦だったが、その平和の王国にも戦火が迫る。軍勢を率いてやってきたのは大国ヤマトの皇子「ヤマトタケル」――もう一人の「タケル」だった。
古事記』のイズモタケル伝説を題材にした表題作『出雲残照』を始め、webで限定公開中の後日譚『それからのチタリ』、仲哀天皇に仕えた采女の目から見た神功皇后新羅征討までの数日間を描いた書き下ろし短編『息長帯比売』を収録。

何かいかにも歴史臭がプンプンしますね。
歴史は好きかと聞かれたあまり好きではありませんが、そういう歴史アレルギーの方にはうってつけの本になっています。
本を開くとどんどんと吸い込まれてしまうような内容にになっています。

自称映画マニアで有名な唐橋史氏だけあって情景の描写が美しい。歴史物というと会話のみでしか成り立たないと思いがちだったがそのイメージを一新させる情景の描写が美しい。
朝、夕、晩。季節の移り変わりとどこをとっても美しいのだ。時代背景も緻密であり、文句のつけどころが無い。

張旦の淡々と語られる情景、色をかえて次々と時代が流れていく。張旦の思いを共にして。

ヤマトタケルと購うイズモタケルの栄枯盛衰を描いた出雲を舞台にし、その歴史の変わり目を張旦の目線で描いた美しいストリーはきっと読むものを虜にしていくことだろう。